M&Aにおける株価算定③

のれんはどのように算定するか。簡単です。会社の営業利益を1〜3倍したのがのれんです。M&Aした後、1年~3年ほどは利益を確保できるだろうということです。のれんは3年~5年と言っていた時期もありましたが、最近ですとコロナ禍のような状況が今後も起きるかもしれないと考えると、5年先の利益が確実に見込むことができる中小企業は少ないのではないでしょうか。したがって今は1年~3年で考えるのが一般的です。ただ、その会社が非常に魅力的で買手候補先が数多くいる場合は評価が高まりますのでのれん3年以上になることもあります。

のれんの算定基礎となる営業利益ですが、単純に帳簿上の営業利益を用いるのではなくいくつか調整をした後の営業利益を用います。一般的に以下のような調整を行います。

・多額の役員報酬を計上している場合は適正な金額まで引き下げる(=利益のプラス)

・多額の交際費を計上している場合は同じく適正な金額まで引き下げる(=利益のプラス)

・減価償却費を計上していない場合は計上する(=利益のマイナス)

上記のようにM&Aした後に発生しないであろう(または発生するであろう)費用を見積もって計上します。この調整をした修正営業利益を何倍かしたものがのれんとなります。

なお、上記で「のれん」と書いていますが、株式を買収した会社単体では会計上・税務上ののれんは計上しません。純資産以上の金額で買収しても「子会社株式」や「関係会社株式」として株式の金額に含まれてしまうからです。

(のれんの会計・税務については時間がある時に別で書く予定ですのでここでは省略します)

次のページでマルチプル法の解説をします。