M&Aにおける株価算定②

・土地の評価

仮に土地に含み益(時価と簿価の差額の利益)があるとします。譲渡する側からすると含み益があればその金額は株価があがるだろうと考えます。一方、買収する側からすると含み益は考慮しづらいと考えます。土地に含み益があっても土地の上に工場が建っていて事業を営むのに工場を使用しているのであれば、そもそも土地は売却できないので含み益は考慮できないと買手は考えます。また、仮に土地を売却できても原状回復費用がかかるので含み益から原状回復費用を減額すべきとも考えます。

土地の含み益をどう考えるかについての正解はありません。正解が無いということは交渉の余地があるということなので、M&Aに携わる仲介者や売手/買手のアドバイザーの腕の見せ所でもあります。

・特許権の評価

私がM&Aプレイヤーだった頃、「この特許を取得するのに1億円ほどかかった。この特許は素晴らしいものだが、うちは営業力が弱いからこの素晴らしさを世間に伝えられない。だからこの特許を有効活用してくれる会社に少なくとも1億円以上で譲渡して世の中に広めてもらいたい」といった相談を時々受けました。しかし私はこのような相談を全て断っていました。特許を取るのは時間もお金もかかるのでとても大変であることは認識していますが、その特許に魅力があれば自然と売上と利益が伴うはずで、その実績が無い状況で相手を探すのは非常に難しいからです。「特許の魅力を相手に伝える能力が無いからだろ」と言われたらそれまでですが、様々な特許の価値を認識できる仲介者は皆無だと思います(逆に、特許の価値を評価できる人がいらっしゃれば、それは非常に強みになります)。

(負債の部)

退職給付引当金…各従業員のM&A時点の退職金の見込額を計上

負債の部の主な修正項目は引当金です。特に退職給付引当金は要注意です。退職給付引当金とは、従業員が退職したら会社から退職金を支払う規程となっている会社が将来従業員に支払う退職金を簡便的に算定して引当金として計上すべきものです。ただ、税務上損金算入が認められていないので、税務会計で記帳している中小企業の殆どが計上していません。

M&Aでの株価では引当金を考慮する必要があるので、そのような規程になっている場合は簡便的に算定する必要があります。

上記のように資産、負債を調整した後の時価純資産にのれんを加算した金額が株価です。ではのれんとはどのように算定するのでしょうか。

次のページで解説します。