M&Aにおける株価算定①

会社は相続税評価額で売買されると多くの税理士が勘違いしています。相続税評価額は相続人に資産を遺すための評価額なので必要以上に高い金額にはなりません。

一方、M&Aは「第三者」への譲渡なので、譲渡する側からすると1円でも高く譲渡したいと考えます。したがってM&Aでは売手が納得するような株価(つまり、より高い金額)になるような算定方法が用いられます。

一般的に用いられるのは①年買法、②マルチプル法、③DCF法です。

①年買法はコストアプローチ(資産負債をベースに株価を算定するという考え)の一つです。会社の純資産(資産総額から負債総額を控除したもの、会社の内部留保)にのれん(超過収益力)を加算した金額が株価となります。

年買法による株価=時価純資産+のれん

とにかく非常にシンプルで分かりやすい算定方法です。某大手仲介会社が営業で説明するために考案したという噂を聞いたことかあります。

「時価」純資産とありますが、これは帳簿上の純資産(資産-負債)を諸々調整した金額です。主な調整項目を列挙します。

(資産の部)

売掛金…回収可能性のない債権で貸倒引当金を設定していない場合は減額

償却資産…減価償却費を計上していない場合は未償却分を減額

有価証券…時価評価と帳簿上の金額との差額を加減算

保険積立金…解約時の返戻金と帳簿上の金額との差額を加減算

電話加入権…ゼロ評価

上記の他、特に論点になるのが土地の評価と特許権の評価です。次のページで解説します。